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転職の自己分析は何から始める?経験を整理する5つの質問と記入例

転職の自己分析は、適職名を決める前に経験と働く条件を分けることから。5つの質問の深め方、記入例、診断の使い方、求人を確かめる手順まで紹介します。

文・構成:セプテンマリア編集部 / 約24分(本文量からの目安)

この記事の結論

転職の自己分析は、最初から向いている職業を決めず、最近の具体的な経験を五つの質問で書き出すことから始めます。自分から動いたこと、感謝された行動、達成感、力を発揮しにくい環境、守りたい生活条件を分けて整理しましょう。最後に『経験の事実・自分の解釈・次に確かめること』へまとめると、求人や働き方を比較する材料になります。この記事の質問と整理表は、編集部が提案する実践方法です。

  • 自己分析の最初の成果物は、適職の断定ではなく、仕事選びの仮説と確認事項をまとめた一枚のメモです。
  • できること、やりたいこと、続けるための条件を分けると、能力と職場環境を混同せずに考えられます。
  • 診断結果は職業を調べる入口に使い、実際の仕事内容や応募条件は別に確認します。
  • 転職だけでなく、現職での業務調整や社内異動も同じ判断軸で比べ、次の小さな行動を決めます。
自己分析を始める5つの問いの図解
目次・この記事でわかること
  1. 自己分析で最初に決めるのは、仕事を選ぶための材料
  2. 準備はメモ一枚から。対象期間と今日の終わり方を決める
  3. 五つの質問を、別々の目的で使う
  4. 質問① 頼まれなくても取り組んでいたことは何か
  5. 質問② 人から助かったと言われた行動は何か
  6. 質問③ 負担があっても達成感が残った場面はどこか
  7. 質問④ 力を発揮しづらかった環境には何があったか
  8. 質問⑤ 次の職場で守りたい生活条件は何か
  9. 回答を『事実・解釈・次の確認』の三列に置き直す
  10. 五問の共通点を探し、仕事選びの軸を二つか三つにする
  11. 回答が矛盾するときは、条件と場面を分けて考える
  12. 転職・社内異動・現職調整を同じ軸で比較する
  13. 自己診断は、経験を増やす補助として使う
  14. 仕事選びの仮説を、求人と面談で確かめる質問へ変える
  15. 五問を一枚にまとめた記入例
  16. 書けないときの修正と、次の七日間の進め方
  17. よくある質問
  18. 参考にした一次情報

1.自己分析で最初に決めるのは、仕事を選ぶための材料

『自分に向いている仕事は何だろう』と考えて、職業名が浮かばず止まっていませんか。最初の段階で必要なのは、正解を一つに絞ることより、何を手掛かりに選ぶかを知ることです。営業、事務、接客といった職種名だけでは、実際に一日のどの作業を担当するか、誰と関わるか、どの条件で働くかまでは分かりません。まず経験から選ぶ材料を取り出し、その後に仕事の情報と照らし合わせます。

この記事では自己分析を、『経験と希望を言葉にし、次の選択で確かめる基準を作る作業』として進めます。自分の性格を完全に説明する必要はありません。例えば『人と話すのが好き』を、『相手の困りごとを聞いて選択肢を整理する場面は続けたい』まで具体化できれば、仕事内容を調べる方向ができます。一方で、大人数の前で話す仕事が合うかは、まだ別の問いとして残せます。

厚生労働省のマイジョブ・カードも、職務経歴、資格や学習歴、価値観や強みなどを整理してキャリアプランにつなげる流れを案内しています。本記事の五つの質問は公式様式そのものではなく、それらの材料を集めるための編集部の提案です。書いた内容をすぐ応募先へ提出する必要はありません。まずは自分だけが読む下書きにして、説明できることと、まだ分からないことを並べてください。

この節の参考資料:[1]

2.準備はメモ一枚から。対象期間と今日の終わり方を決める

使うものは紙でもスマートフォンでも構いません。編集部は、最初の作業を三十分から一時間ほどに区切り、直近半年から一年の出来事を中心に扱う方法を提案します。これは診断に必要な公式の時間や期間ではなく、思い出す範囲を絞るための目安です。異動、休職、育児、介護などで直近の経験が少ない場合は、比較的落ち着いて働けた時期まで戻して構いません。

手帳やカレンダー、担当した作業の一覧、自分が保管してよい評価の記録などがあれば、記憶を呼び戻す補助にします。ただし、会社の機密資料や顧客情報を私用端末へ移す必要はありません。『月末の締め作業』『新しい担当者への引き継ぎ』のように、個人名や社外秘の数字を使わずに出来事を説明できます。数字を思い出せない欄は空白や未確認のままにしてください。

今日の終わり方も先に決めます。例えば『五問それぞれに一場面を書く』『仕事の条件を三つ選ぶ』『調べたい仕事を二つ挙げる』です。最初から整った自己PRまで完成させようとすると、経験を思い出す作業と、相手に伝える作業が重なります。いまは文章の上手さを採点せず、箇条書きで十分です。思い出した感情と、実際に起きた行動を別の行にするだけでも、後の検討がしやすくなります。

3.五つの質問を、別々の目的で使う

五つの質問は、すべてに同じ長所を書くためのものではありません。第一問は自然に注意が向く対象、第二問は他者にとっての役立ち方、第三問は納得できる負荷、第四問は力を出しにくい条件、第五問は生活を続ける条件を扱います。似た出来事を使っても構いませんが、問いごとに見る角度を変えてください。答えが重複しても、それだけで適性が確定するわけではありません。

書き始めに『なぜ』を繰り返すより、まず『いつ、誰が、何に困り、自分が何をしたか』を聞きます。理由は後から考えても構いません。何も浮かばなければ、最近の一週間で繰り返した作業を十個ほど挙げ、その中から説明できそうなものを選びます。完成した企画や表彰だけでなく、問い合わせの確認、片付け、手順の見直し、予定の調整なども材料です。

質問集めたい材料この段階で決めないこと
頼まれなくても取り組んだことは?自分が注意を向けた対象や改善したくなることその行動を一生の仕事にするか
人から助かったと言われた行動は?誰にどのように役立ったかという事実誰よりも優秀かどうか
負担があっても達成感が残った場面は?引き受けたい負荷と納得できる成果忙しい仕事すべてに耐えられるか
力を発揮しづらかった環境は?情報、裁量、協力、時間などの阻害条件自分に能力がないという結論
次の職場で守りたい生活条件は?収入、時間、場所などの具体的な制約希望を一つ残らず満たす会社があるか
図1自己分析を始める5つの問い
  • 自発的な行動頼まれなくてもしたこと
  • 人からの評価助かったと言われた行動
  • 達成感負担があっても残った手応え
考える軸仕事を選ぶ材料
  • 働く環境力を発揮しづらい条件
  • 生活条件次の職場で守りたいこと

五つの問いは適職を決める判定ではなく、経験と条件を整理する入口です。

4.質問① 頼まれなくても取り組んでいたことは何か

『自主的にしたこと』と聞くと、新規事業や大きな提案を思い浮かべがちです。ここでは、気になって自然に確認していたことまで含めます。共有フォルダーの名前をそろえた、初めて来たお客様が迷わないよう案内を加えた、会議前に論点をまとめたなどです。誰に頼まれたかより、自分の目がどの不便や変化に向いていたかを見ます。始めた理由が小さくても、普段の仕事の選び方を知る手掛かりになります。

深める質問は『何を放っておけなかったか』『最初に何を確認したか』『やらなくても業務は終わったか』『どの部分を自分で工夫したか』です。例えば資料を整える行動でも、見た目を工夫したいのか、検索する時間を減らしたいのか、引き継ぎ時の混乱を防ぎたいのかで関心は異なります。行動の名前より、その行動が向かった相手と目的まで書くことが大切です。

編集部が作成した記入例として、受発注を担当するAさんを考えます。最初の回答は『整理整頓を頑張った』でした。書き直すと、『同僚から過去の注文を探す質問が続いたため、参照する項目と保存先を一覧にした。自分で全件を処理するより、必要な情報を各自で見つけられる状態を作りたかった』となります。ここから置ける仮説は、情報を整えて他者が動けるようにする作業に関心がある、という程度です。

注意したいのは、頼まれていない仕事を増やしたことを、そのまま良い経験と判断しないことです。周囲の合意がなく更新して混乱させた、優先業務が遅れたなどの事実も同じ欄に書きます。『改善したい対象への関心』と『実行の進め方』は分けて評価できます。次は担当者と合意してから試す、といった修正まで見えると、経験が単なる自分への称賛で終わりません。

5.質問② 人から助かったと言われた行動は何か

第二問では、自分の好き嫌いだけでなく、相手から見た役立ち方を探します。褒められた回数の多さを競う必要はありません。『この説明で進められた』『確認してくれて助かった』『次回もお願いしたい』といった具体的な反応を思い出します。言葉が残っていなければ、同じ仕事を再び依頼された、作った手順を周囲が使ったなど、実際に確認できる行動を記録してください。相手の心の中を推測して埋めないことが大切です。

深める際は、『相手はその前にどこで止まっていたか』『自分は何を付け足したか』『相手が次に何をできるようになったか』を考えます。『優しいと言われた』だけでは仕事との接点が分かりません。例えば、質問しにくそうな新人に個別で確認の時間を設け、理解を聞いた後に説明順を変えたのなら、観察、問いかけ、説明の調整という行動に分けられます。

編集部が作成した記入例では、店舗勤務のBさんが『忙しいときに頼りにされた』と書きました。追加で確認すると、『注文が重なった際、未提供の商品を一度整理して厨房と共有し、接客担当へ待ち時間の説明をお願いした』という場面でした。本人が提供速度をすべて上げたとは言えなくても、状況を見えるようにして担当間の認識をそろえた点は説明できます。売上への効果が未確認なら、その数字は加えません。

感謝を思い出せない場合も、能力がないという結論にはつながりません。評価が言葉にされにくい職場もあります。自分がいない日に引き継ぐ必要があったこと、同僚が確認しに来たこと、毎回注意していたことを探してください。人に尋ねるなら『私の長所は何ですか』より、『一緒に働いた場面で、私のどの対応が作業を進める助けになりましたか』と聞くと、具体的な材料を集めやすくなります。

6.質問③ 負担があっても達成感が残った場面はどこか

第三問は、疲れなかった仕事を探す質問ではありません。準備に時間がかかっても納得した、難しい調整の後にまた取り組みたいと思ったなど、『何のためなら負荷を引き受けたいか』を確かめます。仕事を終えた瞬間の高揚感だけでなく、数日後に振り返っても続けたいと思えたかを見てください。長時間働いた事実を、そのままやりがいと置き換える必要はありません。

一つの場面を、『大変だった部分』『納得できた理由』『続けるために必要だった支え』に分けます。例えば、新人への説明で相手が一人で対応できるようになったことはうれしくても、通常業務を減らさず毎晩残って教える状態は続けられないかもしれません。その場合、育成への関心と、十分な準備時間が必要という条件を両方残します。達成感があることと、負担に上限がないことは別です。

編集部が作成した記入例として、事務職のCさんは月次報告の作成に達成感がありました。しかし、よく話を聞くと、数字を入力する作業よりも『どこに差異があるかを調べ、担当者が判断できる形にまとめた場面』に納得していました。一方、締め切り直前に前提を何度も変えられることには強い負担がありました。この回答からは、情報を調べて判断材料を作る仕事に関心があり、変更の扱いを相談できる環境を重視する、という仮説ができます。

達成感が全く思い出せないときは、『少し安心した場面』『苦手ではなかった工程』『結果を確かめたくなったこと』まで問いを小さくします。体調や強い疲労によって振り返りが難しい時期なら、いま答えを出さず過去の記録から始めても構いません。書けない理由を性格や年齢で決めず、材料が足りないのか、気力が足りないのか、問いが大きすぎるのかを分けてください。

7.質問④ 力を発揮しづらかった環境には何があったか

苦しかった経験は、自分の弱点を断定するためではなく、次に確認したい条件を知るために使います。『忙しい職場は無理』『人間関係が苦手』のように広い言葉で終わらせず、どの状況で何が難しかったかを分けます。業務量、目的の不明確さ、判断権限、情報不足、相談の遅さ、予定変更、騒音、移動など、同じ『忙しい』にも違う要素が含まれます。

深める質問は『同じ業務でも進められた日は何が違ったか』『事前に分かっていれば対応できたか』『自分に決められる範囲はあったか』『相談相手や手順があれば変わったか』です。例えば電話対応がつらかった場合、会話そのものより、問い合わせ履歴がなく毎回説明を聞き直す状況が負担だった可能性があります。反対に、準備があっても連続した対人対応で消耗するなら、作業の組み合わせや休憩の取り方を確認したいと分かります。

編集部が作成した記入例では、Dさんは『指示待ちなので裁量のある仕事は向かない』と書いていました。出来事を確かめると、実際には担当範囲が曖昧で、決めた後に別の上司から覆されていた場面でした。担当と承認者が明確だった別の業務では、自分で段取りを組んでいました。この場合の確認事項は、『裁量があるか』という一問だけでなく、『どの範囲を誰が決め、変更時には誰と相談するか』になります。

すべてを環境だけの問題にする必要もありません。知識不足、報告の遅れ、確認を省いた行動など自分が変えられる部分は別に書きます。『入職後に学べる内容』『会社側の体制に依存する条件』『双方の相談で調整できること』を分ければ、必要以上に自分を責めずに、次の準備も決められます。被害や違法性の判断が必要な問題は、この自己分析だけで結論を出さず、適切な相談先で事実を確認してください。

8.質問⑤ 次の職場で守りたい生活条件は何か

第五問は、強みを探す質問とは分けて扱います。通勤時間、勤務時間、収入の下限、休日の組み方、転勤、通院、家族との役割分担などは、仕事を続けるための条件です。『その条件を希望する自分はわがままか』と採点する必要はありません。ただし、『収入を上げたい』『柔軟に働きたい』だけでは求人と比較できないため、何をどの程度必要とするかを具体的にします。

編集部は、条件を『満たさないと継続が難しい』『できれば満たしたい』『今は確かめたい』の三段階にする方法を提案します。最初の段階を三つ程度に絞るのは、希望を捨てるためではなく、衝突したときの優先順位を見えるようにするためです。例えば『平日夜の対応を一切なくしたい』と『一定の曜日は定時後の予定を守りたい』では、探す働き方と確認する質問が変わります。

収入の希望を考える際は、月々の手取り、基本給、賞与、固定残業代、手当などの異なる項目を混ぜないようにします。ここで税額や支給額を推測する必要はありません。いま実際に必要な生活費と、募集条件で確認する項目を別に書けば十分です。働く場所についても、『在宅可』の言葉だけで判断せず、頻度、入社直後の扱い、担当業務による違いを後で確認する欄へ移します。

編集部が作成した記入例では、Eさんの最優先は『毎日十八時に退勤』でしたが、目的を確かめると『週二日の家族対応の予定を守ること』でした。毎日の退勤時刻をそろえる案と、特定曜日の予定を固定する案では、選択肢が異なります。目的を言葉にしておくと代替案を考えられます。ただし、他人の都合に合わせて必要な条件を曖昧にする必要はありません。相談できる範囲と、守りたい下限を自分で区別します。

9.回答を『事実・解釈・次の確認』の三列に置き直す

五問に答えたら、長い文章に整える前に三列へ移します。『事実』には自分が担当したことと確認できる反応、『解釈』には得意かもしれないことや大事にしたいこと、『次の確認』にはまだ分からない点を書きます。この区別は編集部の整理法です。自分の解釈を否定するためではなく、求人や第三者の意見に触れたとき、どこを書き換えればよいかを分かりやすくします。

例えば『説明が得意』は解釈です。その根拠として『新人の質問を記録し、最初に説明する順番を変えた』という事実があれば、一つの仮説として扱えます。次に確かめるのは『別の商品や相手にも同じ工夫ができるか』『希望する職種でどの程度の専門知識が必要か』です。一方、『職場に評価制度がない』という感想は、制度自体がないのか、評価基準が共有されていないのかを確認する必要があります。

空欄は、作業の失敗ではありません。事実が空欄なら経験を思い出すか人に聞く、解釈が空欄なら共通点を探す、確認欄が埋まらないなら実際の仕事情報を見る、という次の動きが選べます。逆に、すべてを『コミュニケーション力』など同じ言葉で埋めると、具体的な比較ができません。自分が動いた対象や、動かした順序を残しておきましょう。

経験の事実現時点の解釈次に確かめること
引き継ぎ前に質問を集め、手順の順番を直した相手が迷う点を整理する仕事を続けたい希望職種で資料作成や説明が占める割合
優先順位が毎日変わり、担当同士で確認できなかった変更時に相談できる体制を重視する業務の優先順位を誰がどの頻度で決めるか
家族対応がある曜日は延長勤務が難しい特定曜日の予定を守ることが必要配属先の勤務の組み方と調整可能な範囲
感謝された場面をまだ思い出せない役立ち方について材料が不足している一緒に働いた人に具体的な場面を一つ聞く
経験から求人への質問を作る
新人への説明順を変えた経験を、経験の事実、現時点の解釈、希望職種で確認する問いへ変える例。図を拡大して見る ↗

例①(編集部作成)。実際の経験に置き換え、事実と解釈を分けて記入します。

図の内容をテキストで読む
  1. 経験の事実:新人の質問を記録・説明の順番を変更
  2. 現時点の解釈:相手の迷いを整理・説明を工夫したい
  3. 次の確認:希望職種の説明業務・必要な専門知識

10.五問の共通点を探し、仕事選びの軸を二つか三つにする

三列に置いた回答を横に眺め、『繰り返したい行動』『大切にしたい成果』『続けるための条件』に印を付けます。第一問と第二問に情報整理が現れ、第三問でも人の判断を助けることに達成感があれば、『情報を分かりやすく整え、相手が次に動ける状態を作る』という候補ができます。この段階では、事務か営業かといった職種名まで固定しなくても構いません。

次に、その軸が別の求人でも判定できる表現かを確認します。『成長できる会社』なら、何を学べることが必要なのか、誰からどのような支援を受けたいのかを足します。『人間関係が良い会社』なら、困ったときに相談する相手、情報共有の方法、意見が違うときの決め方など、確かめられる項目へ変えます。抽象的な希望を使ってはいけないのではなく、その下に確認できる事実を一段追加するのです。

軸は初回から完成させず、候補を二つか三つに絞って実際の仕事を調べます。たくさん挙げるほど精度が上がるとは限りません。例えば『相手の困りごとを整理する業務』『判断基準と相談先が分かる体制』『週二日の予定を守れる勤務』なら、業務、環境、生活の違う観点を持てます。それぞれに『この条件が外れると何が困るか』を一文添えると、優先順位が後から変わったときにも理由を追えます。

11.回答が矛盾するときは、条件と場面を分けて考える

『人と関わる仕事は好きだが、接客には疲れる』『安定を求めるが、新しいこともしたい』などの回答は、直ちに矛盾とは言い切れません。好きな対象と働き方の負担が別の問題であることもあります。誰と、何人で、どれくらいの頻度で、どこまで準備して関わりたいのかを足すと、同時に満たせる範囲が分かります。自分は一貫していなければならない、と無理に答えをそろえないでください。

編集部が作成した記入例では、Fさんは『自分で考えたい』と『一人で決めるのは不安』を同時に挙げました。場面を分けると、進め方は工夫したいが、法令や取引条件に関わる判断は専門担当に確認したいという希望でした。必要なのは裁量の有無の二択より、任される範囲と確認が必要な範囲の明確さです。求人や面談で確かめる質問も、『自由にできますか』から『担当者が決められる範囲と、承認を受ける範囲を教えてください』へ変わります。

反対に、収入、時間、仕事内容などが現実に両立しにくい場合は、順番を考えます。今すぐ守る条件と、半年後に改善したい条件を分ける方法もあります。ただし、求人が見つからない理由を調べず、どれか一つを先に諦める必要はありません。地域、勤務形態、必要経験、採用時期など、どの制約が効いているかを確かめてから、代替案の費用や負担を比べます。自己分析は、希望を削る作業だけではありません。

12.転職・社内異動・現職調整を同じ軸で比較する

自己分析の結果がまとまっても、すぐ退職を決める必要はありません。『いまの会社を離れたい』という気持ちと、『望む条件をどの方法で実現するか』は分けて検討できます。現職で業務を調整する、社内の別の担当を探す、社外の求人を比較するという選択肢を同じ表に置きます。比較の対象を増やすのは結論を先延ばしにするためではなく、何を変えると課題が解消するかを確かめるためです。

判断材料が不足している段階では、それぞれに一つだけ確認行動を置きましょう。現職なら担当範囲の相談、社内異動なら制度や募集状況の確認、転職なら求人の仕事内容と必要経験の確認です。実現可能かどうか分からないことを、期待だけで『解決できる』と評価しないでください。確認できたことと、自分が望んでいることを別に書けば、選択肢の長所だけを見て決めることを防げます。

選択肢確かめたい利点負担・不確実性最初の確認
現職での業務調整経験や人間関係を生かして困りごとを変えられるか権限や体制により変更できない可能性変えたい業務と必要な支援を具体的に相談
社内異動・担当変更会社を変えずに業務や役割を変えられるか制度、空き、異動時期が希望と合わない可能性募集要件や異動後の担当範囲を確認
社外への転職業務と勤務条件をまとめて見直せるか仕事内容、待遇、立ち上がり支援には未確認点がある複数の求人で同じ確認項目を比較

13.自己診断は、経験を増やす補助として使う

自分だけで言葉を出しにくいときは、公的な自己診断を使う方法もあります。マイジョブ・カードには興味診断、スキルチェック、価値観診断があります。job tagにも職業興味検査、仕事価値観検査、能力面の特徴から探索する検査などが案内されています。どれを使うか迷う場合は、関心を広げたいのか、価値観を整理したいのか、経験を職業情報と比べたいのかを先に決めると、結果の使い道が明確になります。

注意したいのは、診断結果を応募先の決定に直結させないことです。job tagの公式FAQでは、職業興味検査や仕事価値観検査による職業リストには、回答者の学歴、就業経験、取得資格、専門性などが考慮されておらず、参考として活用するよう案内されています。興味や価値観の近さと、その仕事に入職する条件は別です。表示された職業を知らなければ、仕事内容を知る候補として一つ調べてみます。

結果が自分の感覚と違った場合は、合っているか間違っているかだけを争わず、どの質問にどう答えたかを振り返ります。『人を支えたい』という希望があっても、どの専門知識を使うか、対面で関わるか、作業で支えるかによって働き方は違います。五問の経験メモと診断結果を並べ、共通する点と違和感のある点を一つずつ書きましょう。複数の診断を繰り返すより、気になった仕事の実際の作業を調べる段階へ進むことが大切です。

この節の参考資料:[2] [3] [4]

14.仕事選びの仮説を、求人と面談で確かめる質問へ変える

自己分析が役立つのは、集めた言葉を実際の選択に使うときです。『情報を整理して相手の判断を助けたい』なら、求人の業務欄にある資料作成が単純な転記か、情報の確認や提案まで含むかを見ます。分からなければ、『この業務では、資料の入力と内容の検討をどのように分担していますか』と確認できます。職種名が同じでも担当範囲は違うため、仕事内容を具体的な作業に分けて比べることが必要です。

環境については、希望を伝えるだけでなく実際の運用を聞きます。『相談しやすい職場ですか』より、『担当者が判断に迷った場合、通常は誰にどのように確認しますか』の方が、回答を比較しやすくなります。勤務条件でも、制度の有無に加えて、配属先の扱いや利用条件を確かめます。自分の希望どおりの答えを引き出そうとせず、合わない可能性がある点も含めて情報を集めてください。

比較後は、『仮説が支持された』『条件付きで合う』『情報不足』『希望と合わない』の四つ程度に分けると、無理に点数を付けずに整理できます。重要な条件が情報不足なら、ほかの良い点で埋め合わせたことにせず、次の確認事項として残します。確認が進むにつれて、自分が大事にしたい条件が変わることもあります。そのときは、何を知って考えが変わったのかを一行残しておけば、迷いを説明しやすくなります。

図2回答を仕事選びの質問へ変える
  1. 経験を書く出来事と行動を具体化
  2. 共通点を探す場面と条件を分ける
  3. 軸をまとめる大切な点を絞る
  4. 求人で確かめる仮説を質問へ変える

分析だけで終えず、求人や面談で確かめる行動につなげます。

15.五問を一枚にまとめた記入例

ここでは、問い合わせ対応と事務処理を担当してきたGさんの、編集部が作成した記入例を示します。Gさんは当初、『事務を続けるべきか、人と関わる仕事へ移るべきか』で迷っていました。五問を書いたところ、職種名より『相手の状況を整理し、次の手続きを分かるようにする』という共通点が見えてきました。以下は実在する人の体験談でも、採用や支援の実績でもありません。自分の記入の粒度を考えるための例として読んでください。

第一問では、『同じ問い合わせが続いた際、質問内容を分けて担当者が参照するメモを作った』と記入しました。第二問は、『初めて手続きする人に、必要書類を順に説明したところ、その順番なら進められると言われた』です。第三問は、『調整に時間はかかったが、複数の担当者の情報を整理して解決に進んだ場面に達成感があった』でした。ここでは、すべてを『親切』という一語にまとめず、整理、説明、確認という動詞を残します。

第四問には、『担当者によって回答が違い、判断の確認先も決まっていないときは対応が難しかった』と書きました。第五問は、『週二日は家族対応があるため、予定を早めに確定できる働き方が必要』です。この二つは、本人の長所を示す材料として扱うより、求人を比較するときの条件になります。『対応できない自分が悪い』や『どの会社も同じだろう』と広く決めつけず、確認すべき仕組みと勤務の組み方へ置き換えます。

最終メモは、『続けたい行動は、情報を整理して相手の手続きを進める支援。必要な環境は、回答基準と確認先が共有されていること。生活条件は、特定曜日の予定を前もって確保できること。次に調べるのは、顧客支援と業務運営に関わる仕事の担当範囲』となりました。適職を断定していなくても、調べる対象と質問が具体的になっています。これが初回の自己分析で目指せる、十分に使える状態です。

16.書けないときの修正と、次の七日間の進め方

書けないときは、作業量を増やす前に、止まっている場所を確かめます。出来事が浮かばないなら直近の作業一覧へ戻る、出来事はあるが意味が分からないなら相手の困りごとを考える、希望が多く絞れないなら困る影響が大きい条件を選ぶ、というように進めます。他人の立派な記入例をそのまま借りると、自分の行動や条件を説明できなくなります。見劣りしても、実際の小さな経験を使ってください。

編集部が提案する七日間の例では、一日目に五問へ一場面ずつ答え、二日目に事実と解釈を分け、三日目に必要な条件を整理します。四日目は気になる職業の仕事内容、五日目は複数の求人で担当範囲を見ます。六日目に未確認点を人や相談先へ聞き、七日目に最初のメモを一度だけ更新します。毎日長時間取り組む前提ではなく、一回の作業を小さく切って進めるための例です。日数は自分の状況に合わせて変えられます。

一人で整理しにくい場合、マイジョブ・カードでは、作成した内容を使ってキャリアコンサルタントや先輩などに相談する流れが案内されています。相談前に完璧な結論を作る必要はありません。『五問のうち、この回答がうまく書けない』『経験と希望のどちらを優先するか迷う』のように、止まっている点が分かるメモがあれば話を始められます。利用方法や対象などは、実際に利用する窓口の最新案内を確認してください。

初回を終える目安は、五問すべてに立派な答えがあることではなく、具体的な経験がいくつかあり、守りたい条件と、次に確かめる問いが分かれていることです。何度も自分の性格を考え直すより、一件の仕事情報を読む、一人に経験を聞く、一つの勤務条件を確認するといった行動へ進みます。自己分析のメモは、その結果を受け取って更新するために残します。今日の一歩は、最も答えやすい一問に、いつ何をしたかを三行で書くことです。

この節の参考資料:[5]

よくある質問

転職の自己分析は、職務経歴書を書く前に全部終えるべきですか?

全部終える必要はありません。まず経験と希望条件を粗く整理し、職務経歴や求人を見ながら不足した材料を足します。応募書類を書く際に『この経験を説明できない』と気づいたら、その場面だけ振り返り直せます。自分を完全に理解することを終了条件にせず、次の判断に必要な確認事項が見えているかを目安にしてください。

正社員経験が少ない場合、アルバイトや家庭での経験も使えますか?

自分の関心や行動を知る材料として使えます。ただし、家庭や私的な活動の経験を、企業で同じ業務を担当した実務経験のように書かないことが大切です。何をしたか、どんな制約があったか、仕事との共通点はどこかを分けます。応募に必要な実務経験や資格を満たすかは、求人の条件で別途確認してください。

嫌だった経験ばかり出るときは、どう進めればよいですか?

嫌だった事実を、何があれば取り組めたかという条件へ変えてみます。情報不足、急な変更、業務量、相談先などに分けると、次に確認する項目ができます。それでも振り返る負担が強いときは、過去の記録から担当作業だけ書く、相談相手と一問ずつ話すなど、作業を小さくしてください。無理に前向きな体験へ書き換える必要はありません。

診断ごとに違う職業が出たら、どれを信じるべきですか?

何を測る診断かを確認します。興味、価値観、能力面の特徴など、観点が違えば候補も変わります。結果の多数決で決めず、気になった職業の実際の作業と必要な経験を調べ、五問のメモと比べてください。特にjob tagの興味・価値観による職業リストは、学歴や資格などを考慮していない参考情報として公式に案内されています。

自己分析をしたら、転職しない選択になってもよいですか?

構いません。整理した結果、現職の担当変更や仕事の進め方の調整で必要な条件を満たせる可能性が見えることもあります。逆に、調整の余地が少ないと分かることもあります。転職を結論として固定せず、各選択肢で何が実現でき、何が未確認なのかを比較してください。判断に使った条件を残すと、状況が変わった際にも検討を再開できます。

考えを整理したら、相談先の違いも確認しましょう。

希望職種や勤務地、支援してほしい内容から比較できます。

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参考にした一次情報

  1. マイジョブ・カード:在職者の方へ(職務経歴・能力・価値観の整理)確認日:2026-11-06
  2. マイジョブ・カード:自己診断一覧確認日:2026-11-06
  3. 厚生労働省 job tag:自己診断ツール確認日:2026-11-06
  4. 厚生労働省 job tag:よくあるお問い合わせ(Q17)確認日:2026-11-06
  5. マイジョブ・カード:ジョブ・カードを知る(作成と相談の流れ)確認日:2026-11-06

本文のワーク・記入例は、書き方や考え方を説明するために編集部が作成しています。制度・サービスの条件は、本文で示した確認時点と各公式情報を合わせてご確認ください。

図解・構成:セプテンマリア編集部